故 築山泰三牧師からのメッセージ「一片のパン」
戦時中、小学2年生だった私は縁故疎開で叔父の家に預けられていました。両親や兄弟たちが麦飯や大豆の代用食で我慢していた時代に、百姓だった叔父のせいで純綿のご飯に卵かけという贅沢をさせていただいていました。しかし、やがて戦争が終わり、家族と共に住めるようになった喜びとは裏腹に、その食料事情はきわめて貧しいものになりました。さつまいもの蔓などはまだまだ上等の部類、食料の調達に両親もずいぶん苦労してくれていたようです。
ある日、友だちの家に遊びに行った時、“築山くん、いいものをあげよう”といっていただいたのが<進駐軍のパン>。それまでみたこともない真っ白のふわふわのパン。まるで宝物を食べるような気持で味わいました。なんと美味しかったことか。あれから60年たった今も、あの時の感激は忘れられません。
高級料亭での高価な料理、テレビにあふれる食番組、いまは豊かな食の時代です。しかし、どんなに豪華な料理をいただいても、あの時の一片のパンに勝る感激は二度と味わうことはできないでしょう。
モノは豊かになったけれど、憂きことの多い毎日です。だからこそ、皆さまにも、命のパンであるイエス・キリストを知る喜びを味わってほしいのです。